【腰痛の原因を知ることが重要】
腰痛とは腰部に痛みを感じる症状名のことで、原因となる疾患名は 腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離すべり症、筋筋膜性腰痛、 脊柱間狭窄症など種々さまざまです。 内科系疾患や関節リウマチなどでも腰痛を感じることがあります。 東洋医学による腰痛は 寒さなどにより腰や骨盤周囲の経絡の気の流れが滞ることによりおこる腰痛や 外傷により腰周辺の経絡を損傷し、お血(血の運行失調のこと)により起こる腰痛、 身体が弱ったり疲れが溜まりすぎるときに、生命力や成長の根源である腎精が不足 しておこる腰痛があります。
【当院の治療法】
当院ではまず理学療法による検査を行い、痛みの原因がどこにあるのかを観察します。 骨や軟骨、筋肉、神経以外に原因がなければ内科系疾患を疑います 次に東洋医学的な診察を始め、治療に移ります。 まず、痛みを引き起こしている気の弱い経絡に元気を与えるために鍼を施し 人間がもつ回復力を増大させます。 さらに腰痛の方は腰椎や骨盤周り、鼡経部に気血の滞りが存在しますので、 経絡の気血の流れがスムーズになるように施術をします。 腰の痛い箇所に熱感があるときは、足の方に熱が下がるようにお灸をすることもあります。 気血の流れが良くなると、筋肉や神経の緊張が押さえられ、 痛みは改善し症状は良くなっていきます。 腰痛はすぐ良くなるものから治療が半年以上かかるものもあります。 特に下肢神経痛を伴う方または足の親指の力が弱い方は 急性のぎっくり腰でも治療が長くなることがあります。
◆症例と対処…慢性腰痛 80歳 女性 無職
(初診時)
初診の1年前の7月に自転車に追突され第12胸椎と第1腰椎を圧迫骨折する。救急車で病院へ行き、1月まで入院することになる。退院してから介護ヘルパーさんに来ていただいて何とか生活するが一人暮らしで日常動作にも制限があり腰の痛みも軽減していないことから、当院のはり灸治療を往診で希望されました。
骨折した患部の背骨は画像を見ると、ぐちゃっとつぶれており、その患部をコンコンと叩くと(叩打試験)かなりの激痛を訴えられ、まだ患部はしっかりと安定していない状態でした。
(治療方針)
骨を主る経絡である足の小陰腎経の気の力を高め、また患部周囲の筋、靭帯をお灸により強化し、身体の動作時の痛みを軽減させQOLを高める。血圧が高く、下肢がとても冷える、腰痛の方は骨盤周りの気血の滞りを改善させる。
この治療法で週3回二ヶ月頑張っていただいた結果、杖無しでも歩けるようになり痛みの強さも軽減しました。三ヶ月目から週二回にし、半年後に行った叩打試験でも痛みがなくなっており、骨折患部の強化をすることが出来ました。
次第に一人でスーパーに行けるようになり、買い物袋いっぱいに物を持って歩いておられてときはとてもうれしくなりました。初診から8ヶ月経った3月に治療を終わることになりました。
(考察)
高齢者であり女性で骨も男性より弱いにもかかわらず、良く回復されたと思います。しっかりと治療を受けていただいたことで、リハビリの効果も高まり、また動物性たんぱく質を毎日欠かさず取って頂いたことも患部の強化につながったと思います。
◆症例と対処…腰痛 30歳 男性 会社員
(初診時)
仕事中、立っているときに腰にピリッと違和感を覚え、時間が経つにつれて痛みがひどくなってきた。
仕事が終わり整体に行き、なんとなく楽になったが、次の日朝起きると腰がひどく痛み動くことが困難。少しの動きでも激痛でトイレは這いながら行かなければならなかった。
(治療方針)
この患者さんの場合、仕事が忙しく疲労が溜まっている状態のなか、家電量販店で働いておられる為、ほとんどが立ちっぱなしで「急性腰痛症」、いわゆるぎっくり腰になってしまいました。また急性期に揉んだり叩いたりしたのが腰にとどめを刺したようです。
立ちっぱなしでの腰痛は足の少陰腎経という経絡の気が弱まって起こることが多く、この経絡の気を強めるような治療をすることと、ひどい痛みによる実症状を取り除くため、皮膚にちょんょんと針を当てる散鍼という手技で、邪をとりのぞく治療を行いました。
治療をする前は仰向けで下肢をまっすぐにした状態でそのまま挙上させるテストで腰に痛みが出ていたのが、治療後には消失し、立ち上がったり座ったりの動作もだいぶ改善されました。
その日は会社を休まれましたが、次の日には出社されました。
2日後、2回目の治療をし、その後すっかりよくなられました。
(考察)
このような痛みがひどく動けない方には、患部への治療をするよりも手足の離れた箇所にはり灸をするほうが効果は高まります。また治療日は安静にされ体力を消耗させないことは大事ですが、少し痛みが残った状態でも重いものを持ったりしなければ、治療の次に日には動いて適度に活動されるほうがその後早く良くなっていきます。