【うつ病など心の病の種類や傾向】
こころの病は仕事熱心な方、几帳面、他人に対して配慮を怠らない、 何事も手を抜かない方が発症しやすい傾向にあります。 また過度の労働や社会環境の変化で、 心身ともに疲労やストレスが溜まりやすくなっているため、 うつ病や双極性障害、不安神経症の一部であるパニック障害で悩んでいる方が 増えています。 東洋医学ではこころの病を鬱(うつ)証といい 「情志憂鬱により気機が鬱滞して起こる病症」とされています。 分かりやすく言うと、思い悩んだり悲しんだりが長く続けば、 健康を保持するために働いている気が停滞し、 五臓六腑の働きも悪くなりそれが病気へと進行する。 特に気のなかでも、生命活動を支配、統制している「神気」の乱れが こころの病には関係しています。 神気は意識的、本能的に人体を支配している生命エネルギーです。 神気が健全に働けばこころを乱すことはありませんが、 過度の情動や生活の影響(ストレス)が原因で、 神気が不安定になり人体にさまざまな影響を引き起こします。 こころの病は「何かに怯える」「自分でも理解できない恐怖感」 「起きたくても起きる気力が無い」など、 他の方には分かってもらえないことが多く、さらに病状は悪化し、 自分自身の回復力では治ることが難しくなってきます。 当院では乱れた神気を脈診などにより把握して神気を充実させ、 また、接触させる程度のやさしい鍼灸治療法で心身ともリラックスした状態を つくりだし、徐々に健康な心身に回復させ、 正しい精神活動が行われるようにしていきます。
◆症例と対処…双極性障害 30代 男女性 無職
(初診時)
左足のすねと甲が赤く腫れて治らないので、訪問での当院のはり灸治療を希望されました。
問診で25歳の頃から双極性障害により心療内科に通院しているとわかる。
左足の腫れは2回の治療ですぐに治ったが「夜、足がムズムズして寝られない」
「気持ちを安定させて欲しい」ということでこころの病の治療をすることになりました。
体重が160kgと大きく、満腹感を感じず過食症になっている。気分の落ち込みやイライラを
自分で抑えることが出来ない。皮膚はツヤ無く黒ずんで、声に力が無く、症状が慢性化している印象でした。
(治療方針)
気が上っていたり下がっていたりするので、そのつどお話を伺って体調を見極め、
脈診などではりをするつぼを決定しました。おもに肝という臓腑を支配している経絡や、
腎という臓腑を支配している経絡の気の力を高めることが、この方には精神の安定につながっていました。
また、過度な食欲を抑えるため脾という臓腑を支配している経絡の邪を取り除く手技をいたしました。
気の流れのバイパス的な役割を持つ奇経治療という補助療法を患者さん自身でしていただくため、
マジックで印をつけたところに自宅灸を毎日していただきました。
(考察)
鍼灸治療でこころがすっきりすることで、自分の身体が少しずつ良くなっていると実感され、
毎日奇経治療の自宅灸もされてましたから、足のムズムズ感も出なくなる日が増え、
家からほとんど外出できなかった方が2〜3日に1回は外出できるようになり、
外出できれば気分転換にもなり、また散歩は脳内物質の増加につながることから、
徐々にいい方向に向いていましたが、患者さんの都合により3ヶ月で治療を中止しました。
3ヶ月間でしたが、食事中に満腹感を得られるようになったこと、ほとんど寝てばかりの生活から外出したり、
自宅で運動するようになったりと気持ちが前向きになられたことは、少しは手助けできたかなと思っています。
こころの病の方はこの患者さんもそうですが、はりに対してとても敏感で気が動きやすく
、乳幼児用の刺さない針を使ったりと慎重に脈を診ながらの治療になりました。
脈を診ながら治療をおこなうことで身体にやさしい鍼灸が出来ますので、こころの病をお持ちの方には経絡治療はおすすめです。